どうか、入ってますように。
願わくば、
キャラクターものではありませんように。
先輩の手が離れた途端、
ごそごそとバッグを探る。
「あ!あった!!!」
ポーチの中に1枚のカットバン。
ただし、残念ながらマイメロ柄。
どうしよ…。
男の子にこれは無いよね?
でも…
意を決して、
手の甲にペタリ。
「え?」
先輩は驚いた顔で
マイメロと私を交互に見つめる。
「ごめんなさい。それしか持ってなくて…。」
「い…や…、あの…、ありがと。」
眉尻を下げながらの
ちょっと困ったような“ありがと”。
その表情に思わず笑ってしまった。
「先輩、恥ずかしいって顔に書いてありますよ(笑)」
「えええっっ!?」
慌てて顔を隠そうとする先輩の手には
ピンクのマイメロが微笑んでいた。
「桃ちゃんって、不思議な人だね。
あ…、これ、前にも言ったかな?」
カットバンを指でなぞりながら、
先輩が呟く。
その呟きを合図に、現在から過去へと…。
それはとっても辛い旅。
私に何ができるの?
何が言えるの?
無力な自分に
先輩はなぜ…?
ただ…、
どんな形の旅の終わりでも
おかえりなさいって迎えたい。
「あの日の実家は、
その場にいた者じゃないとわからない
異様な空気だったなぁ。
話したいことは決まってるのに
誰も言いださないんだよ。
全然違う話を無理に盛り上げて、
ワザとらしく笑って…。
その空気に真っ先に根を上げたのは
俺だった。
“俺、ゲイなんだ”
たったひと言の告白。
でも、
家族を壊してしまうには、
十分すぎるほどのひと言だったんだ。」
ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>