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出会いはサイテー、サイアクで…1

パンフレットで見るより
何倍も凄い…。




その見事な桜並木に圧倒されて、
私は口をぽかんと開けたまま
ただ上を見上げていた。

左右から伸びた枝枝で
空さえも見えない。

見えるのは
桃色の世界…。




今朝、
制服のタイが上手く結べずに
出かけるのが随分遅れてしまった。

おそらく、
入学式が行われる聖堂は
この並木道の先にある。

前にも後ろにも誰もいない。

もうすぐ式が始まる時間なんだから
それって当り前で、
私も急ぐべきなんだけど…
なぜか動けずにいた。




春の風が花びらを揺らし、
私の体に次々と桃色を落とす。

染まっていく身体に
まるで自分も
この風景の一部になったような
そんな錯覚を覚えた。

目を閉じ、
深呼吸をする。

桜の花には
ほとんど香りが無いと
聞いたことがあったけれど、
こうして深く吸い込むと、
かすかな淡い香りがした。

何度目かの深呼吸をしたところでふと、
頬に当たる風が
止んでいる事に気付く。

そっと目を開けると、
舞い落ちていた花びらも
ぴたりと動きを止めていた。

違和感に再び見上げると、
一片の小さな花びらが
ゆっくりゆっくり
落ちてくるのが見えた。


「あ!」


私は条件反射のように手を伸ばし、
両の掌を上に向け、
到着を待つ。


「も、もうちょっと…」


ふっっ!


あと、数センチってところで
一筋の風に掬われるように
着地するはずの花びらが
ヒラリと舞い上がっていった。


「あ、あれ?」


思わずジャンプして取ろうとしたけれど、
再び吹き始めた風で、
他の花びらたちと紛れてしまう。


「あれれ?もうちょっとだったのに…。」


何となく
“特別”なモノを感じた一片を取り損ねて、
がっくりと肩を落とした時、


「きゃっっ!?」


いきなり後ろ髪を掴まれて、
静かな並木道に素っ頓狂な悲鳴が響いた。




「な、な、な…!!!」


何が起こったのかわからず、
ただただ
手足をバタつかせる私の後頭部に、


「邪魔なんだよ、お前。」


優しさの欠片も無い、
鋭い声が突き刺さった。


「いいか。俺は、
 今日のこの時間、
 この場所を撮るために
 何日も前から準備をしてきたんだ。
 それがぼーーーっとお前が立ってることで
 すべて台無しになるんだよ。
 また来年の今日まで
 待たなくちゃならねぇんだ。」

「な、なんのことをっっ」


言ってるんだろう?

てゆうか、誰?


振り向きたいけれど、
肩までしか長さの無い髪を
ガッチリ握られていて、
どうにも動けない。


「わかったらさっさと消えろ。」


そこまで言ってやっと、
掴んでいた手を離した。

離してはくれたんだけど、


どんっっ!!!


「きゃっっ!?」


今度は背中を思いっきり押された。

痛いとか
怖いとかじゃなくて、
ホントにとにかくビックリして、
押された方向へ一目散に走り出す。


「な、なにっっ!一体っっ!!!」


心臓が破裂しちゃうんじゃない?
ってぐらい走って、走って、
並木道の途切れた所までたどり着いた。

ぜいぜいと呼吸が苦しい。

でも、どうしても気になって、
恐る恐る振り向くと…、


かなり小さくなったその人が見えた。

立ったり、屈んだり、
すごく動きが怪しい…。

よく見ると
手に何かを持ってるみたい。

あれは…


「カメラ?」


そういえば、

―この場所を撮るために―

って…。


「あ!」


私、もしかして、
すっごく迷惑だった?


―また、来年の今日まで
 待たなくちゃならねぇんだ―


とも言ってたし。

怒られても仕方のないこと、
しちゃってたのかも。

謝った方がいいのかな?

きっとこの学校の人だよね?

ど、どうしよう…。


そうやって迷っている内に、


「あなた!なにやってるの?
 新入生でしょ?そのタイの色!」


先生らしき女性に声をかけられ、
聖堂へ急ぐように促された。




滑り込みで式典の列に加わる

厳かな空気の中、
徐々に頭がクリアになっていくと、
自分が悪いことをしたという気が
深まっていった。

そもそも、
あの時間にあそこにいること自体が
間違いだったのだから。


今度会ったら、
謝ろう…。


そう決めて、
指定された讃美歌を歌う為に頁を開いた。




何枚かシャッターを切った後、
顔の高さに構えていたカメラを下ろす。


「ああ―――、だめ、だ。」


気分が乗ってこない。

もう、邪魔するものは何も無いというのに。

入学式が終われば、
この並木道の静寂も失われる。

撮るなら今しかない。

なのに…。




少しクールダウンしようと
胸ポケットからレンズキャップを取り出す。

すると、
どうやって入り込んだのか、
薄桃色の花びらが一枚
黒いキャップと共に収まっていた。

その弱々しい一片を掌に乗せる。


あいつ…


ふとさっきの
超邪魔くせぇ女の姿が浮かんだ。

小さな体を思いきり伸ばして、
花びらを掴もうと躍起になって…


「こんなもの何で欲しいかよ?
 やっぱ女って、バカだな。」


そう毒づいて、
女にしてやったように
花びらを吹き飛ばそうと
唇の位置まで手を上げた。

でも…

何となく思いとどまり、
もう一度花びらを見つめる。

ささくれ立っていた心が
少しずつだが確実に
凪いていくのを感じた。

キャップをレンズから外し、
ポケットに入れっぱなしにしていた
ボディキャップと合わせる。

その2つのキャップに出来た空間に
桃色の花びらを忍ばせて…。




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