スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--/--/--(--)
スポンサー広告

誕生日の奇跡94

「も、もしもし…。白石です。」


携帯を何度か震わせた後、
ようやく発した言葉は、
バイブよりさらに震えていた。


「俺だ。」


先生の声が
体の隅々まで届く。


「せんせ…。」

「ん?声がおかしいな。泣いてるのか?」


そう言われると、
余計に涙が溢れてくる。

聞きたいと願った声。

嬉しいはずなのに、
話したいことがたくさんあったはずなのに、
想いが想いを呼び、
混乱する。


「せんせ…。せんせ…。」

「桃。大丈夫だ。落ち着いて話せ。
 何かあったのか?」


甘く優しいバリトン…。


「桃…。泣くんじゃない。」


それは、麻酔のように
私の混乱をも痺れさせた。


「先生…。」

「泣きやんだか?」

「…はい。」

「話せるか?」

「はい。でも…」

「ん?」

「何から話せばいいんでしょうか?」

「…それを聞くか?」

「ご、ごめんなさい。」

「何からでもいい。全部、聞いてやる。」

「ぜんぶ?」

「ぜんぶ。」

「朝までかかるかも…。」

「それでもいい。
 お前の涙の訳を全部聞かせろ。」

「せんせ…。」


ふと、思った。

先生はなぜ、
私にここまでしてくれるんだろう?

他の生徒には
誰から見ても冷たい態度なのに…。

もしかして…?

ううん。そんなことあるわけない。

私が先生を想うように、
先生も私を想ってるなんて…。


都合のよい想像を必死で振り払い、
ぽつぽつと話し出す。


優太くんのこと、
教室でのこと、
先輩のこと、
お店でのこと…


それは取りとめのない話しで
結局、何で泣いていたのか
自分でもわからなくなるほど…。

それでも先生は
時々相槌を打ちながら、
ずっとずっと聞いてくれた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



スポンサーサイト

誕生日の奇跡93

今、自分の頬を伝う涙は
どういう意味なんだろう…。

喜怒哀楽のどれにも
当てはまらないような気がする。

ただ、
止まらない。

とめどなく流れて…、
首筋まで濡らした。


互いを想い合う心。

それでもすれ違う心。

もがき苦しみ先が見えない心。


世の中はせつない思いで溢れている。


長い間、辛い思いをしていた先輩とお姉さん。

そして、
悲しみを隠し、明るく歩いてきた優太くん。

お母さんだって、
私を育てるのにたくさんの苦労を重ねてきた。


のほほんと毎日を過ごしてる自分が
恥ずかしく思えるほど
みんな何かを抱えている。


そう…。

先生も
私の知らない何かを抱えている…。

先生…。

無性に先生の声が聞きたい…。




充電中だった携帯を手に取り、
ナンバー000のアドレス帳を開く。

“天才”と表示された画面。

通話ボタンを押せば、
愛しい人に繋がる。

わかっているのに、
ボタンの上に置かれた親指は
動いてくれなかった。


いつでも連絡していいって言ってくれたけど、
もう11時過ぎてるし…、
非常識って思われないかな…。


躊躇している間に画面が暗くなり
“天才”の文字も消えてしまう。

それは、
燃えあがろうとしていた勇気の炎が
ふっと消えてしまったかのようで…


電話ひとつも満足にかけられない自分に
人のために何かをすることなんて出来るの?


すぅっと心が萎んでいくのを感じた。




さっきとは違う種類の涙をこぼしながら、
携帯をゆっくり机に置く。

と、同時に画面が点灯し、一瞬遅れて震え出した。


「え!?」


あまりのタイミングに
ドキドキしながら手に取ると…


「せ、せんせっっ?」


ナンバー000からの着信を知らせていた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



誕生日の奇跡92

海へ




海…。

海…。

私の大事な弟。

手紙一つ出すのに
2年もかかってしまった。

意気地無しの姉さんを笑って下さい。

あなたには強くあれと
散々、教えてきたのに。




あなたをあの日、
傷付けてしまったこと…、
許して欲しいとは言いません。

だってそれほど
私の罪は大きい。

誰を愛そうと
あなたはあなたに変わりないのに、
なぜ、あんな事を言ってしまったのか…。

何を言い訳にしても、
とても足りない。

そう
思っています。




ただ、私は許さなくても
あなた自身は許してあげて。

きっと、海のこと…。

自分自身を責めて、
敢えて孤独に追い込み、
心からの笑顔も無く、
毎日を過ごしてる…。

そんな気がしてなりません。

一生、会えなくても、
あなたが幸せなら私も幸せです。




海。

どうか、
自分を許して。

そして、幸せに…。




月花


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



誕生日の奇跡91

「はぁーーーー!
 つっかれたーーーー!!!」


洗濯物を出しに1階に降りると、
浴室から大きな声がした。

それを聞いて、台所に向かう。




「お母さん、入るね。」


浴室のドアを開けると
湯船で手足を解放したお母さんの姿があった。

つぶった目の下には
疲労の証がくっきりと出ている。


「ホント大変だったね。
 お疲れさまでした。」


私は静かにねぎらいの言葉をかけ、


「のぼせないでね。」


と、浴槽の縁にグラスを置いた。


「ん?良い匂い。なぁに、これ?」


目を開けたお母さんがグラスを手に取る。


「ジンジャー入りのミントティ。
 長湯になりそうだから、水分補給ね。」

「あーーーん、気がきくぅ♪頂きまーーーす!」


美味しそうに口をつける様子を見て、ドアを閉めた。




再び台所に戻った私は
自分の為のお茶を準備する。

しんとした部屋の中で
しゅんしゅんとお湯が湧く音がやけに響いた。


今晩、
先輩から預かった手紙を読もうと思う。

優太くんのことも、きちんと考えたい。

私にだって、
何か出来ることがあるかもしれない。

何か…。


棚に並んだ瓶を眺める。

緑、黄、橙、赤、茶…

色とりどりのお茶たちが私を誘う。

そして、
ひとつに手を伸ばした。




湯のみを机に置き、椅子に座る。

ピンク色の陶器に
緑色が濃く浮かんでいた。

口に含むと、
じわっと甘みと苦みが広がる。


先生が煎れてくれたお茶、
美味しかったな…。


抹茶が入ったこのお茶を選んだのは、
先生に勇気を貰いたかったから。




数分かけて飲み干した湯のみを
机の隅に置き、
バッグから薄黄色の封筒を取り出す。

中の手紙を傷つけないように、
はさみで丁寧に封を開いた。

他人の私が最初に目を通す。

考えもしなかった事だろう。


「海先輩のお姉さん、ごめんなさい。」


手紙に向かって
そっと断りを入れた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

誕生日の奇跡+愛未with海

「桃ちゃんって不思議なコだよなぁ。
 優太は亡くなった妹に似てるって感じたんだよな。
 俺は…
 生まれたばかりの姪に似てるって感じた。
 もしかして、愛未も何かあるんじゃない?」


隣で歩くこの男。

ゲイの仮面を被った、
ふたつ年上の男。

なかなかやるなとは思ってたけど、
そこに気付いたか…。

さすが、私が仲間と認めたヤツ。

新田海。

にったかい。

よく考えると、変な名前www




最初は優太を狙うストーカーとしか思ってなかったけど、
話してみると意外にウマが合った。

一を話せば、十まで理解してくれる。

視点が似ているのか、
めんどくさくない。

逆に隠し事が出来ないってリスクはあるけど。


「ある。
 でも、言ってないんだよね。」

「え?」

「言ってないの、桃にも。」

「ふぅーーん。じゃあ、聞かない方がいい?」


ああ、海って…、
こういうところがあるんだよねぇ。


「おもしろいのに聞かないの?」

「うん。愛未が嫌なら。」

「ふふっっ。」

「なんだよ!」

「べーーっつに(笑)」


そう。

この男は案外イイやつなんだ。

心に傷を負ってるから、人を思いやれる。

だから、
桃の側にも置いておける。

きっとあのコを支えてくれる。

優太と一緒に。


「よし!特別に話そう。
 よーーーく、聞きたまえ。」

「ちょっと待て!
 お前、金取るんじゃないだろうな?」

「あ、バレた?」

「…アホか。」


楽しい。

他愛も無い会話なのに、
本気で笑ってる自分がいる。

手放せるんだろうか、

その時が来たら…。


海はふと立ち止まり、
夜風を楽しむように瞳を閉じた。

涼しげな表情に、
青い月が映える。

その光景は
絵画のように美しく、
私の狡猾な唇をも黙らせた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>




| ホーム | 次のページ>>
Page Top↑
▲ Page Top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。