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誕生日の奇跡86

「友達になってくれたばかりの君に
 こんなことを頼むのは
 どうかと思うんだけど…。」


足元に視線を落とした先輩の決心が
わずかに揺れているのがわかった。


前に踏み出そうとしている先輩を
止めちゃダメだ!

大切な手紙…。

もしかしてこれは
先輩とお姉さんにとって、
閉ざされた扉の鍵なのかも知れない。

私に何が出来るのかわからないけど…。


「先輩!私、預かります!!!」


そう言って、
両手で手紙を受け取る。

先輩は一瞬驚いた顔を見せたけど、
直ぐにホッとしたように笑った。


「うん。ありがと。
 読んでも
 読まなくても
 構わないから。
 君に…任せるよ。」


“君に任せる”


その言葉の重さに改めて緊張が襲う。

でも、
先輩の…
本物の笑顔が見たいから。








「先輩、寄っていきませんか?」


ママの店の前で誘ってみた。

疲れた顔してる先輩に
何か美味しいもの作ってあげたい。


「ああ…うん…。」


迷ってる風な先輩。


「今日は…」

「桃ちゃん、
 ちょっと、ちょっとっっ!」

たぶん、“やめとく”って
言おうとした先輩の言葉を遮って、
隣の果物屋さんの奥さんが呼びかけてきた。

しかも、辺りに聞こえないように小声で…。

急に訪れた緊迫感にドキドキしながら、
果物屋さんに入っていく。




「ど、どうかしたんですか?」

「あら、彼氏?
 かっこいいじゃない♪」


奥さんは私に付いてきた先輩を見て、
いきなりの爆弾発言。

オタオタと慌てる私の代わりに先輩が、


「残念ながら、友人です。」


…なんだかビミョーな返事をした。

紳士的な笑顔に頬を染めながら、


「いいわね。青春ね。」


と、うっとり先輩を見つめる奥さん。


「あ…の、話があったんですよね?」


先輩は色っぽい視線に後ずさりしながら、
話の進行を促した。


「あ、そうそう。さっきね。
 黒塗りのおっきい車がそこにどっかり停まってさぁ。」


そう指さした先はママの店の真ん前。


「こんな細い道に非常識でしょ?
 長い間停めるんだったら文句言ってやろうと
 ずっと見てたわけっっ!
 そしたらさ、運転してる男が
 あんたの店をじーーーっと観察してんのよ。
 ストーカーとかだったら問題でしょ?
 だから、顔見てやろうと前に回り込んだら
 慌てて走り出したのー。」

「顔、見たんですか?」

「ううん。サングラスしててね。
 でも、後ろにも誰か乗ってるような感じだった。
 スモーク貼ってて、よくは見えなかったけどさ。」


黒塗りの大きな車…

2人ともその車に覚えがあった。




奥さんにお礼を言って店を出ると、


「桃ちゃん、やっぱりお邪魔するよ。」


と、先輩はママの店のドアを開けた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

誕生日の奇跡85

「手紙、ですか?」

「そう。…姉からなんだ。」

「!?」

「あの日…、
 桃ちゃんと優太と初めて会ったあの日…、
 帰宅した俺を、この手紙が待ってた。」

「じゃあ、2ヶ月前…?」

「うん。
 2ヶ月前に届いて、まだ読んでない。」

「え!?」


よくよく見ると、封を切った跡が無い。


「弱虫だろ?
 こんな手紙ひとつ開けられないなんて…。
 でも、怖いんだ。
 また拒絶されたらって思うと…。」

「先輩…。」


薄黄色の封筒が微かに揺れている。

先輩の心とともに…。




「あれからしばらくして、
 恋人とは別れたんだ。
 
 彼は全然悪くないのに、
 心のどこかであの店さえ行かなかったらって…。
 言葉で責めるようなことはしなかったけど、
 態度の端々に出てたんだろうね。
 最後は…たくさん泣かせてしまった。

 両親とはね、案外普通に接してる。
 と言っても、
 年に数回電話で話す程度だけど。」


先輩は自嘲するかのような笑みを浮かべて話す。


自分を責め続けてるんだ…。

長い間、ずっと…。


「姉と俺は年が離れているせいもあって
 ほとんどケンカもしない仲の良い姉弟だった。
 姉に育ててもらったと言ってもいいぐらい、
 可愛がってもらったよ。
 だから余計に、
 ショックが大きかったんだと思う。

 頻繁にあった電話もメールも無くなった。

 もちろん、俺からはしない。
 できるはずもない。

 この手紙はね、
 そんな姉から来た、初めてのコンタクトなんだ。」


先輩の口元にあった笑みが消える。

まっすぐ私を見つめる瞳には
決意の光が宿っていた。


そして、
“お願い”の内容が明かされる。


「君と出会った日に届いたこの手紙を
 君に…桃ちゃんに…
 託したい。」

「――――!?」


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



誕生日の奇跡84

「そろそろ帰らないとね。
 具合悪かったのに、ごめん。
 でも、
 ありがと…聞いてくれて。」


私は先輩の腕に抱かれたまま、
首を縦に振ったり、横に振ったり
ごそごそと意思表示をする。

確実に酷いことになってるはずで、
顔が上げられない…。

仕様が無いので
俯いたままそっと体を離すと、


「目、腫れちゃった?
 見せて。」


と、顎を持ち上げられてしまった。


「せ、せんぱいっっ!
 ぶちゃいくだから見ないでっっ!」


慌てて顔を隠そうとする私に、


「ぶちゃいく?
 どこが?
 すごく、かわいいよ。」


本気でわからないという様子で
首を傾げる先輩。

そして、


「でも、その顔じゃ
 お母さん心配しちゃうな…。」


うーーーん…と、
腕を組んで悩んでいる。

その横で私は、
先輩がさらりと言った“かわいい”に
ひとり顔を赤くした。

さっきまで平気で抱かれていたのに、
急に男の人として意識してしまう。

やがて先輩は、


「ちょっと、待ってて。」


そう言い残し、
公園の隅にある自販機に走っていった。

程なく戻ってきたその手には、
あのレモン味のミネラルウォーターが…。


「これで、冷やすといいよ。」


と、まぶたに当てる。


「あ、ありがとうございます。」


ひんやりとした感触が心地よく、
ゆっくりと熱が治まっていくのを感じた…。




片目ずつ交互に
ペットボトルを当てながら、
空を見上げる。

いつの間にか、
夕方というより夜に近い色。

公園の電灯も
どこか堂々と辺りを照らしていた。

先輩も静かにそれを見上げる。




不思議な時間…。

せんせいといる時とはどこか違う…。

そういえば、
匂いも違ったな…。




そんな
落ち着いた時の流れの中で、


「ひとつ、お願い聞いてくれる?」


そう言って先輩は、
一通の手紙を差し出した。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

誕生日の奇跡83

「俺の言葉に固まった家族の中で
 唯一、姪だけは
 素直な笑みを向けていた。
 抱っこしてとせがむように
 ちっちゃい手を俺に伸ばして…」


ふと話を切り、
公園沿いの道をじっと見つめる先輩。

そこには
ベビーカーを押して歩く女性が…。


「その手をさ、取ろうとしたんだ。
 ホントに何気なく…。」


先輩は女性の姿が見えなくなっても
同じ方向を向いたまま…。




「やめて。触らないで。」

「え?」




予想だにしなかった言葉に
思わず聞き返す。


「そう言われたんだ、姉に。」

「!?」


先輩は相変わらず私を見ない。

淡々と語り続ける。

感情が込められていない冷めた口調。

それなのに、
悲しみが苦しいほど伝わってくる。


「逃げるようにその場を立ち去って、
 それから家族とは会っていない。

 1年の春だったから、
 もう2年か…。
 
 あの子も大きくなってるんだろうなぁ。

 桃ちゃんの瞳、似てるんだ。
 あの時の姪の瞳に…。

 って…桃ちゃん?
 
 なぜ、君が…
 泣いてるのさ。」


先輩がやっとこっちを向いてくれた。

でもその姿は
ぼやけて見えない。

私は涙を止めることが出来ず、
しゃくりあげながら、


「せ…んぱいが…泣かないから…」


ようやくそれだけを返した。


先輩は、


「バカだな…。」


そう言って、
私を優しく抱きしめた。

そして、
ぽんぽんと背中を叩く。

まるで幼い子をあやすように…。


「早く泣きやんで。
 君を泣かせたままだと
 優太に怒られちゃうよ。」


先輩の腕の中はあったかくて、
私の涙を余計に溢れさせた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

誕生日の奇跡82

どうか、入ってますように。

願わくば、
キャラクターものではありませんように。


先輩の手が離れた途端、
ごそごそとバッグを探る。


「あ!あった!!!」


ポーチの中に1枚のカットバン。

ただし、残念ながらマイメロ柄。


どうしよ…。

男の子にこれは無いよね?

でも…


意を決して、
手の甲にペタリ。


「え?」


先輩は驚いた顔で
マイメロと私を交互に見つめる。


「ごめんなさい。それしか持ってなくて…。」

「い…や…、あの…、ありがと。」


眉尻を下げながらの
ちょっと困ったような“ありがと”。

その表情に思わず笑ってしまった。


「先輩、恥ずかしいって顔に書いてありますよ(笑)」

「えええっっ!?」


慌てて顔を隠そうとする先輩の手には
ピンクのマイメロが微笑んでいた。




「桃ちゃんって、不思議な人だね。
 あ…、これ、前にも言ったかな?」


カットバンを指でなぞりながら、
先輩が呟く。

その呟きを合図に、現在から過去へと…。

それはとっても辛い旅。




私に何ができるの?

何が言えるの?

無力な自分に
先輩はなぜ…?


ただ…、

どんな形の旅の終わりでも
おかえりなさいって迎えたい。




「あの日の実家は、
 その場にいた者じゃないとわからない
 異様な空気だったなぁ。

 話したいことは決まってるのに
 誰も言いださないんだよ。
 全然違う話を無理に盛り上げて、
 ワザとらしく笑って…。

 その空気に真っ先に根を上げたのは
 俺だった。

 “俺、ゲイなんだ”

 たったひと言の告白。

 でも、
 家族を壊してしまうには、
 十分すぎるほどのひと言だったんだ。」


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

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