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やさしい雨04

「せ、せんせいっっ!」

白衣姿で仁王立ち…
(プラス眉間に皺)

それは紛れもなく二ノ宮先生だった。

「お前はいつも俺をイライラさせる。」

そう言って、
色っぽく髪をかき上げる姿に
目を奪われ…

「おい。そこでボーっとするだけなら代われ。」

「は、はいっっ!」

そそくさとカニ歩きで横に移動すると
返却カウンターの真ん前。

本を数冊抱えた学生の前に割り込む形になった。

「「あのー(怒)」」

学生さんとカウンター職員さんに同時につっこまれ、

「あっ!ごめんなさいっっ!!!」

と、これでもかってほどオロオロ。

その時、
先生に腕を掴まれ…

引き寄せられた。

突然のことで勢いがついたまま
白衣に顔をうずめてしまう。

「…バカか、お前は。」

タバコと消毒液の匂い…。

周りのざわめきが聞こえた。

でも、
動けない…。

動きたくない…。

私、
どうしちゃったんだろ…。

男の人の温もりを感じたいなんて…。


「で、お前は何を探してたんだ?」

「え?あ、はい。あの…。」


冷静に質問されて、現実に引き戻される心…。

そっと先生から体を離す。

先生の細く長い指が
PCを躊躇なく操作してゆく。


先生は知らないんだ。

たったこれだけのことで
こんなにドキドキしてることを。


体の距離より、遥かに遠い心の距離を
縮める術を私は知らない…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 
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やさしい雨03

「あれ?無い…。」

今日のお目当ての本は
前回来た時にたまたま見つけた、
カフェ経営のハウツー本。

メニュー表のデザインが
何点か載ってたのを思い出し、
参考にしようと来館した。

ここにあったと思ったんだけど…。

レシピや経営術が書かれた本が
ずらりと並ぶ棚の中で
美しい装丁のその本はひときわ目立っていた。

見ればわかるんだけど、
借りられちゃってるのかな?

えーーーっとこういうときは…

入り口付近にある
蔵書の状況が検索できるPCに向かう。

数台設置されているPCは
学生や職員でほぼ埋まり、
返却カウンターのすぐ隣の台だけ空いていた。

このPCは
タイトル、著者、出版社、分野から
置いてある場所や貸出状況などが検索できる。

できるんだけど…

タイトルなんだっけ?

残念ながら私は
ぱらぱらとしか見ていない本のタイトルを
記憶する力は持ち合わせてない(涙)

仕方ないので
『カフェ』とだけ入力し、検索をかけてみたけど
びっくりする件数がヒットしてしまった。

こ、こんなにあるの!?

とりあえずひとつずつ表紙を確認するが
お目当ての本にはなかなか出会えない…。

無情にも過ぎていく時間。

カウンターにいる職員さんの視線が痛い。

それに、

なんだか後ろからすっごいプレッシャーが…。

順番を待ってる学生だろうか
(怖くて振り向けないしっっ!)
 
と、とにかく
早くしなきゃっっ!

焦りつつ『次ページ』をクリック。

その途端、

プツッッ…

え?

が、画面が

…きえた。


「お前…いい加減にしろ(怒)」


後ろから聞こえたその声は
私が今いちばん聞きたい声だった。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

やさしい雨02

わが校の図書室は
『図書室』というより『図書館』。

附属病院の関係者も利用するため
マニアックなものまで細やかに揃えてある。

構内で1番背の高い建物なので
さすがの私でもすんなりとたどりつけた。

学生証を提示して中に入ると、
館内は意外なほどの込み合い様。

みんな、日曜日なのに
勉強しにくるんだぁ。

同じ学生として若干の焦りを感じる。

私がここに来る時といえば
買いそこねた週刊誌を読みに来る時ぐらい…。

ふと、机の上に置きっぱなしになってる
書きかけのレポートを思い出した。

あれ、持ってくればよかったかな…。

ここに来てやっと、
そんな考えが過るということは
今日の来館も勉強のためではないということだった。



 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>




やさしい雨01

「桃、今日の予定は?」

小ぶりのおにぎりを頬張りながら
新聞に目を通すお母さん。

まるでおっさん…。

佐伯先生が見たら泣くな。

「今日は学校の図書室に行こうと思ってるの。」

「めずらしいこともあるもんね。桃が勉強だなんて。」

「んー。勉強とは違うんだけどぉ…って、
 失礼じゃない、それ?」

ぷーっとふくれる私には目もくれず

「この、しらすとたくあんが入ったおにぎりおいしいねぇ♪」

と、本日3個目のおにぎりを口に入れる。

「お母さん、食べ過ぎじゃない?」

「いいの、いいの。昨日、大変だったから。」

夕べの売り上げ額で
いかに忙しく大変な夜だったかが想像できた。

「ごめんね、昨日は遅くなって。
 今晩はお母さんの好きなもの作るから。」

「そう?楽しみにしてる♪
 でもねぇ、違うのよ。
 大変だったのは桃のせいじゃないの。」

ん?

私のせいじゃない?

「お皿、買わないとねぇ…。」

あっ!

そういうことか。

佐伯先生のエプロン姿を思い出して切なくなった。

恋ってむずかしい…。

「色々と疲れたから、これ食べたらもう一回寝るわ。」

「うん。ゆっくり休んで。
 お皿は私が片付けるから。」

「ふふ。ありがと♪
 こんなに優しくしてくれるんなら、
 また、愛未ちゃんと夜遊びしてきなさい。」

「夜遊びじゃないってっっ!」

お母さんは、
私の大きくふくれた頬を指でツンと突き
おやすみーーーと部屋に戻っていった。

いつも明るく元気にしてるけど
疲れてるんだ、きっと…。



お母さんが目を覚ましたら
キレイな部屋でくつろげるように
いつもよりていねいに掃除をした。

洗濯ものをベランダに干しながら、
空を見上げる。

雨、降らないよね…。

晴れやかに澄み渡った空なのに
その空気は少しだけ湿気を帯びてるような気がした。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

重なる心 すれ違う思い+佐伯

無残に割れた皿たちを見ても

「いいんですよ、先生。」

とニッコリほほえむ洋子ママ。

こんなじじいにも優しく向けられる笑顔は
まさに聖母のほほえみ…。




いつもなら店を手伝っているはずの桃ちゃんが
なかなか帰らなかったその日は
書き入れ時の土曜日。

夕食をとるために店にいた私は
忙しそうにしているママに

「ウェイター役は任せなさい。」

そう言って、エプロンを借りた。

が、

散々な結果に…。


思い起こせば
妻が病気で亡くなる前、

「お箸の場所もわからないあなたが、とても心配よ。」

そんなことを、こぼしていたな…。

さすがに箸の場所はわかるようになったが
自炊はまったくしないので
『できあがった料理をテーブルに運ぶ』
という簡単な行為ですら、過度に緊張してしまい
ママに失態をさらす羽目になってしまった。

年頃の桃ちゃんは、
これからも店を手伝えないことがあるだろう。

私がしっかりしないでどうする。

とりあえず、自炊から始めてみるか…。

というわけで
(前置きが長くなったが)
私は今、スーパーにいる。

手始めにカレーでも作ってみるかと
野菜を物色中。

カレー…

何が入ってただろうか…。

洋子ママのカレーは野菜が大きめの素朴なタイプ。

玉ねぎと
人参と
じゃがいもと…

ママの愛情。

何をバカなことをと苦笑いをし、
野菜売り場を後にしようとしたところで

「あら?佐伯先生、お買いものですか?」

なんとも美しい声で呼び止められた。

「洋子ママ!」

今の今まで妄想の中で
ほほえみかけてくれていた聖母が
私と同じカゴを持ち
そこに立っている。

初めて立ち寄ったスーパーで
こうして出会うとは…


これは

運命?


「何か作られるんですか?」

「は、はい。料理を始めようと思いまして。
 今夜はカレーです。」
 
「自炊ですか。
 良いことですね。」

ほ、褒められたっっ!

もっと腕をあげて、
頼れる男になりますから!

期待してて下さい!

洋子ママ!!!

「でも…」

でも?

「お店に来られる回数が減ってしまうんですね。
 私としてはちょっと残念かなぁ(笑)
 それじゃあ。」




佐伯為雄56歳。

自炊なんてするものかと
カゴの中の野菜をひとつひとつ戻していく男。




「あの人、お財布忘れたのかしら。」

「ドジねぇ。」




穏やかな初夏の午後だった。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

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