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広がる世界6.50

「18年か…。」


俺の前にコーヒーを置いた教授は
窓の外を眺めながら言った。




18年という歳月。

長いのか…
短いのか…

あの時から俺の時間は止まったままだ。




「もういいんじゃないのか?」


教授はコーヒーを一口飲んで
血糖値が気になるんだがな…
とブツブツ言いながら砂糖を入れた。


「私も年をとった。
 そして君もだ、二ノ宮くん。
 いつまでも若くない。
 そろそろ自分の人生を歩んだらどうだ?」

「…おっしゃっている意味がわかりませんが。」

「いや。わかっているはずだ。」

「…。」




あの写真を置いた意味は?

その言葉と一緒に
コーヒーをゆっくりと飲みこむ。




意味は…




そういうことなのだろう…。





廊下で生徒の声がする。


「久しぶりに昼飯どうかね?」


そんな時間か…。


「またにします。あまり食欲が無いもので…。」

「研究もほどほどにしたまえよ。
 結果を急ぐと、ろくなことが無い。
 授業も写真部も息抜きと思えばいい。」

「…本気で言ってます?」

「本気だ。」

なぜ、目を逸らす(怒)




外で昼食をとると出て行った教授と別れ
野菜ジュースでも作ってもらおうとカフェに向かった。


それにしても
教授が最後に言ってきたあれは何だ。


「今年、食物学科に入ってきた子でな、
 知り合いの娘さんがいて…
 白石桃というんだが…。」

しきりに頭を撫でている。

「まぁ、あれだ…、
 気にかけてやってくれ。」

至極、歯切れが悪い。

俺がそういうのを嫌いだと
知っていての話だからか?




白石桃か…。

関わりになることもないだろう…。




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広がる世界6.25

「佐伯教授。」


やっと、つかまえたぞ。

昨日、俺に写真部を押しつけて以来だ。


「あきらかに逃げてますよね?俺から。」

「何、馬鹿なことを言ってるんだ。
 私が君から逃げる理由なんてないよ。
 かわいい教え子の恭一郎くん。」

「と、言いつつ出て行こうとするのはなぜですか?」




ここは、大学院内にある病理学研究室。

で、この目の前の
俺から逃げたそうにしている人物は佐伯教授。

ハゲてはいるがこの世界で知らない者はいない。




「これ、教授でしょう?」

俺はあの写真パネルを差し出した。

「しーーーらんよーーー。」

それを人は
動揺してると言うんだ!

「この存在を知っている人物はあなたしかいません。」

今日は冷静に問い詰めようと決めていたが…

「う、宇宙人が来て置いていったんじゃないのかなーーー?」

ブチっっっ!!!!!!

何かが切れる音がした…。




今朝それとなく、
部長の新田に聞いてみたが、

「写真パネル?
 昨日のあの時間にはすべて回収してたはずですよ。」

と言っていた。

大体、新田がこの写真のことを知ってる訳がない。




「佐伯教授…。」


もう一度息を整えて、意図的に抑えた口調で詰め寄る。

この人にはこれが効果的だと長年の付き合いでわかっていた。


「いい年をして、どうしてこんないたずらをするんですか?」

「いたずらじゃない。虫干しだ。」

吐いた…。

「たまには出してやらんといかんだろーーー?(笑)」

「こっ…の、ハゲ…」

俺の我慢もここまでだった。




「18年前、処分したと言ってましたよね?」

「そうだったかなーーー?」

「あなたって人はーーー(怒)」

「まぁ、そんなに眉間にしわを寄せて怒らんでも。
 せっかくのキレイな顔が台無しだぞ。
 それにしても、相変わらず嫌味な髪だ。
 つやつやでフサフサで…。
 長めにしてるのは私へのあて付けか?」

と、悪びれず
頭をツルンと撫でながら言う…。


はぁ…。

いつも結局こうなる…。




「コーヒー、飲むだろう?(笑)」




かなわないな、
この人には…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

広がる世界06

「ナイト登場か。」

私と優太くんをちらっと見て
…行ってしまった。

「何?どうしたの?」

「えっ…と。
 昨日、あのブースで会って…たぶん写真部の顧問だと思う。」

何だか、しどろもどろになってしまう。

「そう…。」

「優太…くん?」

「あっ、ごめん。
 今度は桃ちゃんが食べられちゃうんじゃないかと思ってさ。」

「えーーー!?そんなんじゃないよーーー!」

私はブンブンと手と頭を振って否定した。

「なら、いいけどさ。でも…」

優太くんは私の頬をつんっとつついて、

「顔、赤いよ。」

と、真顔で言った。

「え!?走ったからだよ!」

ホントは違うとわかってて、
必死で言い訳をならべるけど
優太くんは心の奥を読むように私をじっとみつめてる。

居たたまれなくなってうつむいていると、

「桃ちゃん。お茶しよっか?」

と笑顔で言ってくれた。

よかった。
いつもの優太くんだ。

それから小一時間、
お茶しながらいっぱいおしゃべりしたけど
優太くんはときどき上の空…。


私も…


眼鏡の奥の瞳を思い出していた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

広がる世界05

一斉に女生徒の視線が集中したのがわかった。

目の前のこの人に…。




「あ、はい。会いましたっっ。」

「そうか。」

「……。」

き、緊張して…
頭まっしろ!!!

視線も痛いし!

「じゃ。」

あ…
行ってしまう。

緊張して何も話せないくせに、
なんだろ…、
この気持ち…。

はじめてのモヤモヤした気持ちに戸惑いながら
広い背中が遠ざかっていくのをを見ていると、

「!?」

急に立ち止まり、振り向いた。




気持ちを見透かされたような気がして
耳まで赤くなる。

「お前、名前は?」

「え?」

「名前だよ。」

「し…」

「白石桃ですけど、何か?」

トレーを持った優太くんが
となりでそう言った。

優太くん、
笑ってるけど…

いつものスマイルじゃないよ?


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

広がる世界04

写真部の部長さんは
なんていうか…
不思議な(世界の)人だった。

「あの…入部は…」

まで言うと

「ああ、しないよね?だと、思った。」

と、
怒りもせず
笑いもせず
私も見ずにそう言った。

ただ、
となりに立ってる優太くんを
じーーーっと見てる。

「はは。拍子抜けだね。じゃ、行こっか。」

って、優太くんが言った途端、

「君は入るよね?」

と、態度豹変。

「君、名前は?
二ノ宮は女子だけって言ってたけど、昨日も来てたの?
ああ、残っておけばよかったな。
どうせ、ろくなヤツ来ないし、帰ったんだよ。
君みたいなかわいいコなら大歓迎さ!」

こ、これは、もしや!!!

「あ、あの…僕は付き添いで…。」

「そうなの?
じゃあ、モデルやらない?服着ててもいいからさ♪
ああ、そこの女子、もう帰っていいよ。」

優太くん、青ざめてまーーーす。




命辛々、逃げてきた私たちは、
とりあえず構内のカフェに落ち着くことにした。

「部長さんって、あっちの世界の人?」

「そうみたいだね。本気で喰われちゃうかと思ったよ。」

「優太くん、かわいいもんね。」

「桃ちゃん。男にかわいいは褒め言葉じゃないよ。
それに桃ちゃんの方がよっぽどかわいいし。」

「//////」

「ねぇ。走ったら喉乾いちゃった。何か飲もうよ。」

まだ、どきどきが治まらないのに涼しい顔で歩き出す。


優太くんも十分、

不思議な人…。




ここのカフェは大きい学校だけあって
すごくキレイで充実してる。
(しかも、お安い♪)

私はホットのソイラテ、
優太くんはアイスのオレンジティを注文した。

「持って行くから、席取っといて。」

「うん。」

ぐるっと見渡して
中庭が見える、窓際の席に向かった。


その時、

「部長には会ったのか?」

あの声に呼び止められた。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

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