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若葉のころ21

結局、美優さんの最期を愛未に話した。

愛未の考えを聞きたかったんだと思う。

ううん。

自分の胸だけにしまっておくのが辛かっただけなのかも…。


「そっか。そうだったんだ。」

「黙っててごめんね。」

「ううん。言いにくいことだから。
 それに、あの場で言わなくて正解だと思うよ。」

「どうして?」

「洋子ママ、そういうことにちょっと敏感でしょ?」

「―――」

そうだった。

お母さんは人の死にかなり過敏に反応する。

特に事件や事故など人為的な場合。

私、すっかり忘れてた。

自分の親のことなのに…。

「桃?どうした?」

「ううん。なんでもない。」

今日あった色んなことを消化するのに一生懸命で
お母さんのことを思いやる気持ちを無くしてた。

ごめんね、お母さん…。




「自殺…かもね。」

自分でも、もしかして…と思ってたことが
人に言われると、どきっとする。

確かに
お母さんの必死に否定する姿、尋常じゃなかった。

「優太が桃にこだわるのはそれが関係してるのかも…。」

「どういうこと?」

「贖罪だよ。」

「?」

「美優ちゃんを守れなくて死なせてしまった事に対する贖罪…。
 だから、桃にこだわり、守ろうとしてる。」

愛未にそう言われて、優太くんの言葉を思い出した。

『桃ちゃんに会った時、美優の生まれ変わりだと思った。
 美優を守れなかった僕をもう一度試してるんだと…。
 だから美優の分まで…
 いやそれ以上に君を守りたいんだ。』

「優太、苦しんでるんだ。
 美優ちゃんの死に囚われて…。」

優太くん…。

「桃、守ってあげな。
 桃が優太を守るんだよ。」

「え?守るって、どうすれば…。」

「そのままでいいの。
 桃はそのまま笑ってればいい。
 優太はそれが一番幸せだと思うよ。」

そんなことでいいんだろうか…。

「ねぇ、桃?
 桃のいいところはなんだと思う?」

「―――分からない。私、何も誇れるものないし。」

「桃のいいところはね、普通っていうこと。」

「そ、それっていいこと?」

「そうだよ。普通って大事だよ。
 桃といると波立った気持ちが落ち着くの。
 いつもの自分になれる。
 すごく素直になれる。
 裸の自分を見せても、桃はやんわり受け入れてくれる。」

「…そうかなぁ?」

「気付いてないところが桃なんだよねぇ(笑)
 優太もそういう桃だから家に連れていったんじゃない?
 無意識にね。」

「…。」

深い。

深すぎてわかんないよ、愛未。

「まぁ、桃は何も考えなくてよし!
 考えるのは私の役目だから。
 いい?いつも通り笑ってね。」

「う、うん。」

いつも通り…

大丈夫かな、私。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 
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若葉のころ20

店には愛未が来ていて
私の話を聞こうと待ち構えていた。

「今日は行けなくて残念だったーーー!
 で、どうだった?優太宅は。」

「う、うん…。」

歯切れが悪い私を見て愛未とお母さんは顔を見合わせた。

「もしかして…何かされた?」

「ち、違うよ!そんなんじゃなくて…。」

「じゃあ、なによ?」

「―――うん。あのね…」

どこまで話したらいいんだろ?

優太くんは隠す必要はないからって言ってたけど…。

結局、私は

優太くんには美優さんという双子の妹がいて、
拒食症で入院中に亡くなったこと

美優さんは私によく似ているらしく
そんな私を見てお母さんが泣いてしまったこと

これだけ2人に話した。

なんとなく、
美優さんが屋上から転落死したことは言わなかった。

「そっかぁ…。」

愛未はそう言って考え込み、
お母さんは静かにカフェオレを淹れた。

店内に香ばしいコーヒーと甘いミルクの香りが溶け出す…。

「桃。」

「ん?」

お母さんが私と愛未の前にカフェオレを置きながら言った。

「また、行っておいで。」

「…うん。」




その晩遅くに愛未から電話がかかってきた。

「私さぁ、優太のこと勘違いしてた。
 基本良いヤツだけど
 特定の彼女も作らずにちゃらちゃらしてる軽い男だって思ってた。」

ず、ずいぶんだねぇ…。

「でも、違った。そうじゃなかったんだね。」

「…うん。」

「ねぇ?桃。
 優太がこの学校に入ったのは
 美優ちゃんが拒食症になったことと関係してると思わない?」

「え?」

「だって、ただカフェを開きたいだけだったら
 短大行ってまで栄養学を学ぶ必要ないでしょ?」

「…」

さすが、愛未。

私、そんなこと考えもしなかった。

「あのね、愛未…」


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ19

「じゃあ、母さん。
 桃ちゃん送ってから直接バイトに行くから。」

「わかったわ。
 桃ちゃん、今日は驚かせてごめんなさいね。」

「いえ…」

正直、驚くことばかりだった。

さっきこの玄関をくぐった時の呑気な自分が恥ずかしい。

「あの…」

何か言葉をかけたいと思っても
口下手な私に言えることといったら

「お母さん、ごちそうさまでした。
 どの料理もすごくおいしかったです。」

こんなことぐらいで…。


「ありがとう、桃ちゃん。
 もしよかったら…
 また遊びにきてくれるかしら?」

「はい。」

必ず…。




行きとは逆に流れる風景…。

優太くんも
私も
言葉少なに、電車の揺れに身を任せていた。


人の運命も
電車に乗って前の駅に戻れたらいいのに…。

幸せに笑い合っていたあの駅に…。

涙がこぼれそうになり
目を閉じた。




「じゃあ、ここで。」

電車を降りてそう言った私に
優太くんは首をかしげた。

「どうして?送っていくよ。」

「大丈夫。お母さんのとこ寄って帰るから。
 それに、バイト先そこでしょ。」

と、笑いながら目の前の居酒屋を指さした。

「そうなんだけど…。」

かなり不服そうな優太くん。

さっさと行かないとついて来ちゃいそうな雰囲気で…

「じゃあね!また明日。」

と駆け出そうとした瞬間、
ぐいっと強い力で腕を掴まれた。

「!?」

「守るから。」

「え?」

「守るよ、桃ちゃんを。」

「優太くん?」

「桃ちゃんに会った時、美優の生まれ変わりだと思った。
 美優を守れなかった僕をもう一度試してるんだと…。
 だから美優の分まで…
 いやそれ以上に君を守りたいんだ。」

掴まれた腕が熱い。


結局、優太くんは
店まで私を送り、バイトに向かった。




優太くんが私に向ける優しさは
美優ちゃんに向けられるはずのものだった…。


ほんの少し
寂しいのはなぜなんだろう。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ18

それから、
1時間かけてテーブルの上の色々な物を食べた。

その間、優太くんは美優さんとの楽しい思い出を話してくれた。

「よく似てるんだ、桃ちゃんと。
 笑った顔とかフワっとした雰囲気とか
 あと…
 方向オンチのところとかね(笑)」

一気に親近感が湧いちゃう。

「小学校でも中学校でも校内で何回も迷子になったからね。」

…私も。

「だから、
 入学式の日、ビックリしたんだよ。
 美優にそっくりな子が
 美優と同じように学校で迷ってるんだから。」

耳が痛いです。




そのあと、
少し残ってしまった食事にラップをかけ、食器を洗った。

優太くんが淹れてくれた紅茶をテーブルに置いて
今度は二人並んでソファに座る。

「美優はね、高1の時に極度の拒食症になって、
 それから1年間入院してたんだ。」

「拒食症?」

「うん。
 点滴で命を繋いでる状態だった。

 そしてある晩、
 屋上から転落して


 死んだ。」

「―――?」

屋上から転落?

それって…

「事故だったの。そう、あれは事故。」

いつの間にか戻ってきていたお母さんが
一瞬、私の頭に浮かんだものを否定した。

「警察もね、体が弱ってたから足を滑らせたんだろうって。
 遺書も発見されなかったし。」

それを聞いて、内心ホッとした。

もし、
美優さんが自ら命を絶っていたなら、

あまりにも残酷過ぎる…。




その時、
優太くんが私の手をぎゅっと握った。

そこから伝わる微かな震え…。

それが何を意味しているのか、
その時の私には知る由もなかった。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ17

「美優と僕は、双子として同時にこの世に生を受けた。
 だから漠然と死ぬ時も一緒だと思ってた。

 でも…
 美優は僕を置いて逝ってしまった。」




きれいなレースのカーテンから
やわらかな日差しが入るリビング…。

「そのソファは美優の一番のお気に入りの場所だった。
 そこに座っていつも母さんが料理してる姿を眺めてた。」

優太くんの視線は私を通して彼女を見つめている。

「今日の料理はおかしいぐらいに美優が好きなものばかり…。
 桃ちゃんが来るからって母さん張り切っちゃって…。

さっき、食べたいって言ってくれて、嬉しかったよ。」

優太くんの瞳は揺れていた…。

「すっごく、おいしいよ。
 それに、

 あったかい…。」

「うん。そうだね。」




私はポテトグラタンをもう一口食べた…。

美優さんの好きだったこの席で…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ16

「ごめん、桃ちゃん。ひとりにして…」

優太くんは今まで見せたことない悲しそうな笑顔で戻ってきた。

「優太くん…あの…」

「桃ちゃん、外出よっか。」

「あ、あのね。ご飯食べない?」

「え?」

「この料理、お母さんが一生懸命作ってくれたんでしょ?
 私、食べたいな。」

「桃ちゃん、君って人は…




そんなにお腹空いてたの?(笑)」

「ちがーーーーーう!」


良かった。

いつもの優太くんの笑顔だ。



それからふたりで少し冷めちゃった、
でもとってもあったかい料理を食べた。

「桃ちゃん。
 今食べてるそのポテトグラタンね。
 僕の双子の妹、美優が大好きだったものなんだ。」

優太くんはゆっくりと
一言一言選ぶように話しだした。

それは、
笑顔の裏に隠された悲しい過去だった。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ+優太

ごめんね…

ここ数年で小さくなった母の背中をさすりながら
自分の浅はかな考えをこれでもかというほど悔んでいた。

意識しないまま出てきてしまった涙は
心の傷の深さを表している。

最近は笑うことも増えてきたけど
昔のような弾ける笑顔では無く、どこか抑えたもので
桃ちゃんに会えば、またあの笑顔を見せてくれるんじゃないかって…

僕の勝手な思いだった。

「少し休むわね。早く桃ちゃんのところに戻ってあげて。」

そう言って、自室のドアを閉めた母さんに
これ以上かける言葉は無かった。

一緒にいれば無理して元気を装うのだろう。

話しかければ無理して明るく返事をするのだろう。

そういう人だ。

家族を何よりも大切に思っている。

そんな母さんの笑顔を曇らせたのは




僕だ。

でも、
ホントウのことは誰も知らない…。

美優が僕に科した重い十字架は
一生ひとりで背負っていく…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ15

「おかあ…さん?」

どうしていいかわからず
立ちあがったまま動けずにいると
優太くんが駆け寄り

「大丈夫だよ、母さん。
 泣かないで…。
 この子は美優じゃない。」

と、お母さんの持っていたトレイを受け取り、テーブルに置いた。

そして、
ごめんね…と優しく背中をさすりながら部屋を出ていった。




なに?

私がどうかしたの?


そういえば、
さっき玄関で紹介された時も私を見て驚いた顔してた。




「母さん。この子は白石桃ちゃんだよ。」




この子は…


今思えば
優太くんの紹介の仕方も変だった…。


さっきまでの優しい空気から一転してしまった部屋の中で
必死に頭を整理しようとするけど
ますます混乱していくばかり…。


お母さんが一生懸命作ってくれた色とりどりの料理たちが
ゆっくり冷めていくのが悲しかった。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ14

優太くんのお家は白を基調とした素朴な外観で
家の中はハンドメイドと思われる品がたくさん飾られていた。

キッチンから続くリビングに置かれたソファには
派手過ぎない柄をセンス良く配色されたキルトがかかっていた。

木のフレームのソファにとても合っていて
ここに座ってくつろぎたいと思わせる空間になっている。

「ここが、気に入った?」

「うん。すごくかわいい!このキルト、お母さんが?」

「そう。ハンドメイド全般が趣味なんだよ。
 うちの家族はセーターを買ったことがないね(笑)」

お母さんは穏やかな笑顔がすてきなふんわりとした人。

優太くんはきっとお母さん似なんだね。

「どうぞ、座って。」

「ありがとう。」

腰かけた感じもすごく良い。

さっきまでの緊張がほぐれていくみたい。


この場所からテキパキと動いているお母さんの姿がよく見える。



いや、ながめてる場合じゃない。

やっぱり手伝おう!

優太くんにそう言おうと視線を向けると、
窓際に立って私をじっと見ていた。

「やっぱり…」

やっぱり?


その時、

「おまたせー。」

とトレイを持って近づいてきたお母さんが
私の前でピタリと止まった。

「み…ゆう?」

そう言ったお母さんの目から
静かに涙があふれだした…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ13

「好きなところに座っててね。お昼、もうすぐ出来るから。」

「え!あっ、すみませんっっ!!!」

「いいの、いいの。
 母の料理もなかなかだよ。
 桃ちゃんのお母さんほどじゃないけどね。」

「そ、そんなこと…」

「優太、桃ちゃん困らせちゃだめよ!」

「はーーーい♪」

優太くん、これ以上緊張させないでっっ!!!


それにしても、
いきなり来てお昼ご飯ごちそうになるなんて、
図々しいって思われないかなぁ…。

手伝った方がいいよね…。

「あの、私、お手伝いを…」

「いいの、いいの。
 台所に女ふたり入るべからずだよ(笑)」

「なぁに、それ?」

「いいの、いいの。
 桃ちゃんはゲストなんだから座ってて。
 手伝いがいる時は僕がするから。」

そんなこと言われても落ち着かないよーーー!


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ12

桜も散り、
眩しい日差しに緑がキラキラきらめき出してきたある日。

午後からの授業が休講になり、
優太くんに家に遊びに来ない?と誘われた。

愛未も誘ったけど、看護学科は通常通りの授業らしく、

「残念だけどまたにするわ。
 優太に限って変なことにはならないと思うけど、一応気をつけてね。」

と、おかしな言葉で送り出された。

変なことって何よぉ。

優太くんに失礼じゃない!

「何?どうしたの?」

「ううん!なんでもないっっ!」

いつの間にかひとり言を言っちゃってたのか(汗)

お昼ののんびりとした空気が流れる電車の中で
赤くなった顔を隠すように窓の外を眺めた。




「もうひと駅だからね。」

「う、うん。」

「さっき母に電話しといたから、首を長くしてまってるよ(笑)」

「う、うん。」

「…もしかして緊張してる?」

「え?う、うん。ちょっとだけ…。」

「桃ちゃんは相変わらずかわいいね。
 何も緊張することないよ。母は優しい人だし、それに…」

「?」

「二人きりにはならないから(笑)」

「!?」

「愛未ちゃんに釘をさされたからね、メールで。」

もーーーー!!!まなみはーーーー!!!


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ11

教室に戻る間、優太くんは何も話さなかった。

いつもはたくさんおしゃべりしながら歩く時間。

今日はすごく長く感じる…。

なんとなくこっちからも話しかけづらくて
だまって後ろを歩いていると

「ほんとにそれだけ?」

もうすぐ教室ってところで突然話しかけられた。

「え?」

「二ノ宮先生を悪い人じゃないって思う理由。」

「う、うん。それだけだよ。」

うそ、ついちゃった。

なんでだろ…。

入学式の日の出会いのことも
オレンジ色の教室でのことも

言いたくなかった。

自分の胸の中にしまっておきたかった。

「そう…。わかった。」

優太くんは私に背を向けたまま、こう続けた。

「でもね、桃ちゃん。
 もしまた君を傷つけるようなことがあったら、
 今度こそ許さないよ。友人としてね。」

「・・・優太くん。」

ありがとう。

そして、
ごめんなさい…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ10

「あのね。私が悪いの、遅刻したんだから。」

無表情になった優太くんを目の前にして
すっごく焦ってる私…。

「次はちゃんと遅れないように行くから。それに…」

「それに、なに?」

今まで聞いたことない低く抑えた声。

しまった…。

ぎゅっと唇を噛む…。

「聞かせてよ。それに、なんなの?」

「そ、それに…
 あの人、そんなに悪い人じゃないと思う。」

「はぁーーーー!?桃、頭おかしくなったんじゃないの?
 生徒に向かっておまえらなんかどうでもいいっていう男の
 どこがいいヤツなのよーーーー!」

愛未、煽らないで!

「たしかに、見た目はいいけど、人としてサイテーだよ!
 なに?桃。ああいう冷徹メガネが好みなわけ?」

「そう…なの?」

「違う!そうじゃなくって!!!
 あの、ほら!なんだかんだ言って授業は丁寧で分かりやすかったし、
 口で言うほどいいかげんな感じじゃないのかもって…。」

「まぁねー。授業の内容が良かったことは認めるわ。」

「ね?そうでしょ?
 もう忘れよっっ!優太くんもご飯まだなんでしょ?」

「う…ん。」

「早くしないとお昼休み終わっちゃうよ!」

優太くんは納得してない様子だったけど、
それには気付かないフリをして
出来るだけ明るく話しかけた。

今すぐにでも泣きたかったけど、
ご飯をいっぱいいっぱい食べた。




私だって、ヒドイこと言われたんだと思う。

愛未みたいに怒ってもいいのかも知れない。

でも、
あの人が悪い人とはどうしても思えない。

思いたくない。


だって、


私の涙をぬぐったてのひらは


とっても温かかったから…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ09

「あーーー!ムカムカするーーー!!!」

講義室を後にした愛未と私は
その足でカフェ来た。

愛未は怒りにまかせて
手当たりしだい注文してる。

「ま、愛未?こんなに食べるの?お腹こわすよ!」

「いいのっ!怒りを満腹感で紛らわすのっっ!!!」

何だかよくわからない理由だけど、
苦しい様子も見せず出来た料理からどんどん平らげていく…。

「お昼から食欲旺盛だねー!」

英語の授業を終えやって来た優太くんが
空いた皿たちを見て目を丸くする。

「ちょっと優太、聞いてよ!!!」

さっきの講義室での出来事をピザを頬張りながら説明する愛未。

それを「うんうん」と聞いてた優太くんの顔から




笑顔が消えた。


何だろう…。

優太くんには聞かせちゃいけなかった気がする…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ08

そのままあっさりと授業は終わり、
駆け寄る女子生徒たちを完全に無視して講義室から出ていく先生。

「あっ!桃、どこ行くのっっ?」

一言謝りたくて、思わず走り出す…。




「あのっっ!二ノ宮先生、待ってください!!!」

思ったより大きな声が出て、
自分でもびっくりした。

白衣の背中がピクリとし、その場に立ち止まる。

「今日は遅れてすいませんでした。」

下げられるだけ頭を下げ、じっと先生の言葉を待つ…。

「…。」

沈黙が永遠に感じる…。

「おまえ…」

「は、はい!」

「教授と知り合いなのか?」

「え?あ、あの…。母がやってるお店の常連さんで…。」

「ふーん。それで遅刻しても平気だと思ったのか?」

「ち、ちがっっ…」

眼鏡の奥の冷たい目が私のすべてを突き放す…。

「まぁ、いいさ。俺も授業なんてどうでもいい。」

「え?」

「おまえらなんかどうでもいいって言ったんだよ。」

「!?」

「ダブろうと教授とデキようと関係ないが、目障りだ。
 遅刻するぐらいなら出てくるな。」

そう、吐き捨て歩き出した。

「ちょっと何それ!あんた、それでも教師?」

いつの間にか隣に来てた愛未が白衣の背中に噛みつく。

「愛未、やめてっっ!私が悪いんだから!」

「だって、桃!」

「俺は…
 教師じゃない。研究者だ。」

その一言に
さすがの愛未も返す言葉がなかった…。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ07

「何ですか?教授。講義中ですよ。」

マイクを通して聞こえる、明らかに苛立った声…。


この声って…。


「いやー。このコを長話に付き合わせてしまってな。
 遅れたのは私のせいなんだよ。」

「…(怒)」

「というわけだから。」

とだけ言って、講義室を出ていく佐伯せんせ。


「く…っそ…。じじぃ…。」

白衣を着たその人は宙を仰ぎ、
長めの髪をくしゅっとかき上げた。

そして、
自分を落ち着けるように大きく息を吐き出し、

「続ける。」

と、授業を再開した。




取り残された私はどうしていいか分からず
その場で立ちすくむばかり…。

そこに愛未が駆け寄ってきて、私の手を引っ張った。

「早く、桃!」

「あ!う、うん。」

周りの冷たい視線の中、ようやく席に座った。




何もなかったように淡々とすすめられていく授業…。


「なぁに、あのこ。
 印象付けるためにワザと遅刻したんじゃないのー?」

「佐伯教授まで手懐けてるなんて、何者ー?」

女子生徒がひそひそと話してるのが聞こえる。


「桃、あんなの気にしない。」

愛未の優しい言葉にもどこか上の空…。




悪口なんてどうでもいい。


あの人に最悪の印象を与えてしまった事が
たまらなく悲しかった。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ06

「ありがとうございました。」

「なんのなんの。」


講義室に着いてお礼を言い
扉を開け中を覗くと、
心配そうにこちらをうかがう愛未の顔が見えた。

「こっち、こっち!」

と手招きされて、そろっと入ろうとした途端、

「そこの女!
 俺様の授業を初日から遅刻するとは、いい度胸だな。」

講義室内の全員が見る中で
思いっきり指さされている私…

「あ…の…」

何にも言えるわけないっっ!

その時、
涙ぐみうつむく私の横を抜けて、
悠然と中に入っていく…

「佐伯せんせ?」

神、再び降臨!!!


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ05

ど、どうしようっっ!!!

自分がどこにいるか全然わかんないっっ!!!

愛未に電話しようか…

第1講義室に意気揚々と向かって、
見事に迷子になった私は
半べそをかきながらウロウロ、オロオロ…。

そんな私を神様は見捨ててなかった!




「桃ちゃん?」

「さ、佐伯せんせーーー!(涙)」


お店の常連さんである佐伯先生は
この学校ではエライ先生らしいんだけど(入学して知った)
お店では優しい(フツーの)おじさま。


「どうしたの?授業は?」


19にもなって迷子になりましたと言いにくくてぐずぐずしてたら


「次の授業は何かな?」

「病理学です。」

「病理学…二ノ宮くんか。よし、一緒に行こう。」

「は、はいっっ!ありがとうございます!!!」


と、喜んだのもつかの間、
急ぐ様子もなくゆっくり歩きながら


「ママの店は何時ごろ暇なのかな?」

「お母さんは休みの日は何してるの?」

「再婚…とかする気ないのかねぇ?」


なんて聞いてくる佐伯先生に
若干の焦りを…。


「あ…の、せんせ?授業始まってるんですけどぉ…。」

「ああ、大丈夫、大丈夫。二ノ宮くんだから。」

「へっっ?」

「ふぉふぉふぉ」


ふぉふぉふぉって…

ホントに大丈夫ですか、佐伯せんせ?


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ04

「えーーー!?優太がゲイ?ない、ない(笑)」

「そうかなぁ…。」

「だってさぁ、ゲイだったら女子ばっかの短大に入んないでしょ?」

「そっかぁ!そうだよね♪」

「大体、ゲイだったら何?優太の事キライになるわけ?」

「ううん。変わらないと思う。」

「でしょ?そんなくだらないことで悩まないっっ!」

「はーーーい。」

学科が違うから愛未とは前みたいに会えないけど、
毎日のラブコールだけは欠かさない。

「ところで、その病理学の先生だけど」

「ん?」

「今までずっと研究室に籠ってて、人嫌いの変人って聞いたよ。」

「そうなの?
 クラスの人は長身のイケメンで将来有望の天才学者だって。」

「ずいぶん違うね…。」

「うん…。」

「まぁ、明日受けてみればわかるよ。
 第1講義室だからね、迷わずに来なよ。」

「だ、大丈夫だよーーー。」

もぉ!愛未はいつまでも子供扱いするんだからっっ!

そんな、いつも、いつも迷わないって!








はい。迷いました…。




ここは、どこーーーーーー!!!(涙)


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ+謎の小部屋

ここは聖マリアンヌ大学構内の端の端…

今は使われてない小部屋に
一人また一人と女子が入っていく…。




「どう?おもしろい情報あった?」

「ありましたよ、部長。」

ここは
腐女子が集う知る人ぞ知るサークル部屋。

腐女子という言葉が出来る前から
ひそかに活動を続ける闇サークルである。

何気ない顔をしてクラスに溶け込んでいる腐女子たち…。

その女子たちが学校内のさまざまな情報を持ち込み、
それをもネタにして幹部と呼ばれる数人が同人誌を作っている。

登場人物の名前などは変えてあるが
関係者なら大体想像がつく、かなり際どい内容のため
足がつかないように
発行部数を少なくしてある。


「うちのクラスのプードルボーイは
 冷徹メガネの話に謎の反応をしましたよ。」

「ふーーーん。それだけ?」

「えっ…と…」

漫画や小説のネタになる有力情報を入れた子から
優先的に配布される為、どの子もみな必死だ。

「そうだ!
 最近、そのプードルボーイの周りをうろついてる男子がいます!」

「だれ?」

「たしか、写真部の部長です!」

「ああ、アイツね。」

部長と呼ばれる女子はしばらく考え

「うん。いいね。なんか出来そうだよ。水聖ありがと。」

「じゃあ!」

「いいよ。楽しみにしてて。」

「あ、ありがとうございます!tama部長!!!」

「tamaはペンネーム。普段は環でいいから(笑)」

「は、はい。すいませんっっ!!!」




優太、危うし!

はたして、
二ノ宮、新田との絡み具合はいかにっっ!!!




つづく…(かも)



 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ03

教室に戻るとクラスメイトの水聖(みさと)ちゃんが、

「ねぇねぇ。二人は選択科目何にしたの?」

と聞いてきた。

食物学科で栄養士を目指してない人は
病理学の授業を一般科目に置きかえることができる。

「えーと。私はそのまま病理学にしたの。
 看護学科の友達と一緒に受けられるから。」

「僕は英語。
 金髪碧眼の女の子も呼べるカフェを目標にしてるからね。」

「そっかぁ。いいなぁ、桃ちゃん。
 私は将来性を感じて中国語にしたんだけど…。」

そこまで言うと、水聖ちゃんは顔を曇らせた。

「どうしたの?」

「今年、病理学を受け持つ先生がすっごいカッコイイらしいのよーーー(涙)」

「…。」
「…。」

「そうそう。しかも独身!」
「で、若くして准教授になったかなりのやり手ーーー!」

「…。」
「…。」

他の子も加わって、教室はヒートアップ!

病理学を受ける子はクラスで三分の一程度で
それに(栄養士にならないのに)入ってた私は超ラッキーらしい。

優太くんが彼女を作らないってわかってから
学生生活の潤いを見つけるためにクラス中が躍起になってる。

サークル内や他の学科とのコンパも頻繁にしてるみたい。
(なぜか私には誘いが来ないけど…。)

「失敗したな…。」

優太くんがひとり言のようにつぶやいた。

「え?何が?」

その時、先生がやってきて
答えを聞けないまま授業が始まった。




優太くん、
失敗したなって言ったよね…。

病理学受けたかったのかな?









イケメン先生だから?








もしかして!?








優太くんもあっちの世界の人?


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ02

翌日から通常の授業が始まり、
浮足立っていた毎日も
忙しくも落ち着いた日々に変わっていった。

教科書が詰まったバッグの中には
当たり前のように緑色のカメラが納まっている。




「カメラ、気に入ってくれたみたいだね。」

優太くんは
アイスティーをぐるぐるとかき混ぜながら嬉しそうに言った。

「うん♪写真撮るのがこんなに楽しいとは思わなかった!」

誕生日から事あるごとにカメラを取り出しパシャっっとしてる。
(めちゃめちゃぎこちないけど!)

「わからないことがあったら、すぐ聞いてね。」

「うん♪」

「メモリーいっぱいになってない?写真は消去してる?」

「メモリー?消去?」

「…(やっぱり)」




それから昼休みは急遽、
デジカメ使い方説明会に…。

「ごめんね。最初にちゃんと説明しとけばよかったね。
 そのメモリーカードは4GBあるから、簡単にはいっぱいにならないと思うけど…。
 説明書は無くしちゃってるから、ダウンロードして明日持ってくるからさ。」

「ヨンギガバイト?ダウンロード?」

「…(しまった)」


優太くんは時々意味不明な言葉を使います(涙)


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

若葉のころ01

「桃ちゃん、はいこれ。」

「?」

カフェでお昼をしてたとき、
突然、優太くんが紙袋を差し出した。

「僕のお古なんだけど、まだまだ最近のモデルだから。」

中にはかわいいピンク色のポーチと…

「カメラ?」

「うん。デジタルカメラ。」

それは、きれいな緑色のカメラで
私の掌にすっぽり収まるサイズのものだった。

どうして?

っていう顔を優太くんに向けると

「何がいいかなぁって悩んだんだけど、
 カメラ全然使えないって言ってたし、
 これなら細かく教えてあげられるかなぁと思って。」

「えーと…そうじゃなくて…」

「桃ちゃん。19歳になったんでしょう?」

「え?」

「お誕生日おめでとう!」

「ええーーー!!!!!」

ビックリしたのと嬉しいので声にならない…。

「あ、ありがと…。」

それだけ言うのがやっとだった。

「どういたしまして♪」

とやわらかく微笑む優太くん。


その笑顔は
どこまでも
どこまでも優しい…。




今日、4月4日は私の19回目のbirthday。

いつも、お母さんと愛未がお祝いしてくれてた。

「愛未ちゃんがね、
 夜一緒にお祝いしようって誘ってくれたんだけど、残念ながらバイトでさ。」

ま、愛未、いつのまにっっ!

「来年は必ず参加するからね!」

「ううん!かえって気を遣わせてごめんね!」

「ごめんねはおかしいよ。友達の誕生日を祝うのは当たり前でしょ?」

「優太くん…。」




教室に戻ると、クラスのみんなから口々におめでとうを言われた。

驚いて優太くんを見るとキュっと片目をつぶってみせる。


緑色のカメラのfirst shotは
ちょっとピンボケのクラスメイト達。




19回目のbirthday、
一生忘れないよ。


 ぽちりに感謝カンゲキ雨嵐<(_ _*)>



 

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