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出会いは、やわらかく、あたたかく…7

短大生活2日目は
明日からの本格的な授業開始の前に、
午前は各授業のオリエンテーション、
午後はサークルの紹介と、
いかにも大学生らしい1日。

優太くんは何かと気にかけてくれ、
お昼も誘ってくれた。


「桃ちゃん、一人なら僕とカフェに行かない?
この学食すっごいオシャレなんだって。」

「あ、うん。ありがとう。
でも、先約があって…。」

「もしかして、愛未ちゃん?」

「うん。」

「そっか…」


愛未とは学科が違うから、
昼食ぐらいは一緒にと前々から約束していた。

でも、
優太くんのがっかりした表情を見たら…


「良かったら一緒に…」


こう言い出さずにはいられなかった。

(良いよね?愛未に相談してないけど…。)

昨日の2人のやり取りを思い返す。

愛未のキツめの言葉たちを
サラリとかわす優太くん。

(うん。大丈夫。)


「ふふ。」


3人での楽しい昼食を想像して、
思わず笑いが漏れた。


「ん?僕と一緒がそんなにうれし?」

「!?」


正解だけど正解じゃない優太くんのひと言と、


「じゃ、早く行こ♪」

「えっっ!?わわわわ!!!」


当り前のように握られた手に
素っ頓狂な声が飛び出す。


「真っ赤になって、ホント君ってかわいっっ♪」

「//////」


手を引っぱられながら、
駆け抜ける廊下。

桜の下で出逢ってから、
ビックリすることばかり。

アナタは
前向きで、
大胆で、
ホントに不思議なひと…。

繋がれた手は熱くて、
おまけに
頬も耳も熱くて、
でも…、
嫌じゃない。

そんな気持ちになってる自分自身が
一番…不思議。



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出会いは、やわらかく、あたたかく…6

「洋子ママ、ここA定ね。」

「こっちはビールと何かつまみ~。」

「はいは~い。ちょっと待ってね~。
 桃、徳さんのとこにビールお願い。」

「うん。」


午後7時。

ここは、母親が営む
『カフェレスト ママの店』。

“カフェ”とついてはいるけど
所謂昔ながらの喫茶店で、
コーヒー、ビール、
ホットケーキに定食…
雑多に色々なメニューを置いている。

私は八百屋の徳さんにビールを出した後、
お母さんを手伝う為にキッチンに入った。


「なんだか今日は忙しいね。」

「そうねぇ。」


最近無かった賑わいに
お母さんも私も驚きを隠せない。




商店街の一角にあるこの店は
私が生まれた時には
とっくに存在していたらしい。

ほとんどのお客さんが
商店街で商売をしている常連さんで
小さい頃からの顔見知りだから、
男の人が苦手な私でも
さすがに“大丈夫な人”ばかり。

さっきビールを持っていった徳さんなんかは、


「俺が桃ちゃんのおむつ、替えてやってたんだぞ!」


が、口癖。

ビールを半分あける頃には…、


「俺はぁ、この桃ちゃんのぉ~」


やっぱり(笑)


「ま~た始めちまいやがった。
 徳よぉ。
 桃ちゃんもお年頃なんだから、
 そろそろおむつの話は卒業してやんなよ。」

「ああん?魚屋ぁ、何言ってんだい?
 卒業じゃなくて、入学だろ?
 だからこうして集まって…」

「あ!ばかっっ!
 まだ、言うなって!!!」


ん?

いつもと流れが違うような…。


「徳ちゃん!
 それはみんな揃ってからって
 打ち合わせしたじゃねぇか!」

「なんでぇ!花屋まで!
 ちょこっとぐれぇ、かまやしねぇだろ?
 桃ちゃんもわかっちゃいねぇよ!
 なぁ?」

「あ…はい。っと、え?何?」


首を傾げながらお母さんを見ると、
何かを悟ったように
苦笑いしていた。

どうやら今日の賑わいは
ただの偶然じゃ…ない?




それから、小一時間ほどで
商店街の顔馴染みさんが顔を揃えた。

中には、
昼間行った多治見書房のおじさんもいる。


「じゃあ、そろそろいいか?」


さっき怒られて
少し大人しくなっていた徳さんが
ここぞとばかりに立ち上がった。

それに合わせて、
そこにいた全員が立ち上がる。




私はこの晩のことを
一生忘れないだろう。


照れながら、


「桃ちゃん入学おめでとう。」


と言った、徳さんを。


目尻に涙を浮かべて、


「洋子ちゃん、ここまでよくがんばったなぁ。」


と言った、魚屋の重さんを。

みんなの拍手を…
笑顔を…

私、忘れない。




「釣りはいらないから。」


結局みんな、
合言葉のように同じひと言を口にして、
提供したものに見合わない金額を支払って帰った。

お釣りを返そうとするお母さんを
振り切るようにして。

最後のお客さん、
多治見のおじさんから、


「キチンした形にすると、
 洋子ちゃん受け取らないだろ?」


そう聞いて、
お母さんもようやく納得したようだった。

嬉しさと申し訳なさが入り混じった表情で、


「ありがとうございます。」


と、深々と頭を下げる。

私もその隣で頭を下げた。

床に涙が
水たまりを作るまで…。




ただね、おじさん。

あんなお土産はいらなかったよぉ。


「あのイケメンは彼氏かい?」

「っっ!?」


お母さんの質問攻撃、
ホントに、
ホントに、
凄かったんだからぁ。




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出会いは、やわらかく、あたたかく…5

「ふぅ。
 まだまだ、順番来そうにないね…。」

「うん。」

「先にお昼にすれば良かったぁ。」

「はは、そうだね。」


入学式とオリエンテーションで
短大初日は終了。

愛未と私はその足で、
授業で使う教科書や参考書を買いに
指定の書店に来ていた。

授業が始まる明後日までに
揃えておかなくてはならない為、
指定の書店―多治見書房―の店内は
聖マリアンヌの生徒で溢れていた。


「ほんっと女子ばっか。」


教科書販売用の仮設レジの列に並びながら
愛未はうんざりしたような声を出した。

それを聞いた周りの女の子は
同感とばかりにくすくす笑う。

多分きっと、

“男の子との出会いが少なくて嫌”

って意味に取ったんだろう。

でも、愛未のそれは…


「女子特有のドロドロネチネチ、
 嫌なんだよねぇ。」

「ま、愛未!声、おっきい!」

「ふん。」


…さっき、笑ってくれてた女の子たち、
睨んでます、よ(涙)

そんな視線は気にせず、
愛未さまは何処吹く風…。

声のボリュームを落とすことも無く、


「ま、良かったじゃん。
 桃はイケメンと仲良くなれて。」


と、さらに挑発的な言葉を繰り出す。


「な、仲良くって、みんなだよ!
 クラス全員仲良くなったの!」

「ふ~ん。
 クラス全員の手、握ったの?」

「そ、それは…」


言葉に詰まった私を
ニヤニヤと覗きこむ愛未。


ど、どうしよう…。

ここで黙ったままだと
周りの人に変に思われちゃう!

上手い言葉が見つからないまま、
口を開きかけたその時、


「握ったよぉ、全員♪」


列の後ろの方から
春風のような声がした。




ゆ、優太くん!?


黄色いざわめきを背負って、
声の主が近づいてくる。

愛未は…

さっきと同じ、
ニヤニヤした表情のまま。

もしかして、いるの知ってた?

横目でキッと睨むと、


「あれ~?
 噂のお友達じゃん!
 紹介してよ、桃!」


わざとらしい芝居口調で
そう言った。




「やぁ、桃ちゃん♪」

「あ、うん。
 こ、こんにちは。」

「ふふ。こんにちは。」


隣に立つ優太くんは
やっぱりとっても格好良くて、
女の子の注目を一身に浴びた。


う…。
こんな中、何言えばいいの?


助けを求めるように愛未を見ると、
愛未は愛未で
挑戦的な目を彼に向けている。

優太くんは
その目を怯むことなく受け止めていた。

すべてを包みこむような微笑みで…。




「はじめまして。
 桃ちゃんと同じクラスの中村優太です。」

「うん、知ってる。」

「そう?
 僕、有名人?」

「まぁね。派手な登場だったし。」

「あ、入学式?」

「…どういう気、あれ。」


優太くんは笑ってるけど、
愛未の目は…笑ってない。


「ま、愛未?」


流れる緊張に
空気が硬化する。

でも…、
それを柔らかくしたのも
やっぱり優太くんだった。


「僕さ、
 爪の先までフェミニストなの。
 だから、
 あそこで会ったのが君だったとしても…
 って、君、名前は?」

「…愛未。北川愛未。」

「愛未ちゃんかぁ。
 スッゴクかわいい名だね。」

「…」

「じゃあ、仕切り直し。
 僕さ、髪の毛一本までフェミニストなの。
 だから、
 あそこで会ったのが君だったとしても、
 こうして手を取って…(ぎゅうっっ)」


ええ!?


「連れて行ったよ、どこへでもね♪(うぃんくっっ)」

「…」

「ていうか、
 君だったとしても(ぎゅうっっ)」

「きゃあ♪」

「君だったとしても(ぎゅうっっ)」

「いやん♪」

「君だったとしても(ぎゅうっっ)」

「あふん♪」





「もう、やめーーーーっっい!!!
 あんた達もポッとしないっっ!!!」

「はは。ツッコミ厳しいね。
 でも、嫌いじゃない♪」

「ドMかっっ!?」


よくわからないけど、
この2人…


「うーーーん。どっちかっていうと
 Sだと思ってたんだけど…」

「本気で答えんな!」


仲良く…


「今のちょっとゾクゾクしたぁ♪
 やっぱ、僕M?」

「うるさい!」


なった?








これは、
かなり後に聞いた話。

あの時、多治見書房には、
入学式での私と優太くんを見て
良い印象を持たなかった
看護科の生徒がいたらしい。

そこで愛未は
優太くんが書店に入ってきたのを見て、
あんなことを…。


「優太が上手く乗ってこなかったら、
 一方的に悪者にして、
 噂の矛先を向けてやろうと思ってさ。」


愛未は悪びれもせずそう言ったけど、
勝算があったに違いない。

だって、
いきなり手を握って殴られなかった男の子は
優太くんだけなんだもん(笑)




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出会いは、やわらかく、あたたかく…4

私は…
男の人が苦手。

特に
同じくらいの年の男の子が。

たとえ、
相手に悪意が無かったとしても、
側に寄られると身がすくみ、
話しかけられると言葉に詰まる。

それが、


「信じられない…」


そんな私が
男の人に手を引かれてるなんて。

しかも、


「2回もあるなんて…」


18年間で一度も無かったことが
同じ日に続けて起こる。

これって…


「運命、かもね♪」

「―――っっ!?」


小さなひとり言に答えが返ってきて、
私は耳まで赤くなるのを感じた。

でも、当の本人は
さっきと変わらない笑顔のまま。


そういうこと、
女の子に言い慣れてるのかな?

愛未も言ってたけど、
すっごくモテそうだし…。


「…。」


茶色の髪が陽に透けて
きらきら輝いていた。

その輝きと逆行するかのように、
私の心は不安で陰っていく。

愛未が心配していたことが、
現実になってしまうかも…。

経験からくる恐怖は
じわじわと広がっていった。




「さぁ、着いた!
 ここが食物学科の教室だよ。」


廊下の端で、優太くんが言った。


「桃ちゃんは白石だからAクラスだよね?」

「う…うん。」

「ふふ。良かった♪」

「え?」

「さぁ、入ろっか!」

「ええっっ!?」

「最初が肝心だから、
 一発、やっっちゃうよぉ♪」

「な、なに言って…―――」


優太くんは私に
ぱちっと一回ウインクをして、
教室に入ろうとする。


「ちょ、ちょっっと待って!
 ここでいいですからっっ!
 中まではいいですからっっ!」

「ん?」

「送って頂いてありがとうございました。
 も、もう、大丈夫ですから―――…」

「そ?
 それは良かった。
 でもさ、
 僕もこのクラスなの。」

「へ?」

「だから…」


優太くんは何だかとっても嬉しそうな顔で
教室の扉を開けた。




う、うそ!?
同じクラス?
あ、中村だから。
って、そこじゃ無くて、
いや、そこも気になるけど、
手!
手!
握ったままだから――――っっ!




と、言いたいのに、
ひと言も発することのできない私は
口をパクパクさせながら
優太くんに後ろに立っていた。

否応無しに
クラス中の視線が集まってくる。

それは、
好奇と嫉妬の入り混じった視線。

すると優太くんは
何もかもを吹き飛ばすような
元気いっぱいの声で、


「僕の名前は中村優太。
 こっちのちっちゃい子は
 この学校で出来た一番目の友達、
 白石桃ちゃん。
 僕は友達を大切にする男だから、
 迷子になってた子猫ちゃんを
 エスコートしてきましたー♪」


と言って、
繋いだ手を高々と上げた。

その屈託のない笑顔に
どこからともなく
クスクスと笑いが起こる。

そしてさらに、


「2番目の友達も、
 3番目の友達も募集中だから、
 ヨロシクねーーー♪」


そう、
とびっきりキュートな笑顔を
クラス全員に振り撒いた。

途端に
さっきまでの射すような視線が
柔らかいものに変わる。

壇上に立っている、
恐らくクラス担任の先生までも
破顔している。

お陰で、
遅刻のお小言は
ほんのちょっぴりで済んでしまった。




私は前から3番目の中央の席、
優太くんは一番後ろの窓際の席。

それぞれの席に向かって歩き出し、
優太くんの手も離れていった。


「これからよろしく、桃ちゃん。」


耳元に
優しい囁きを残して…。




誰もが緊張する入学式の日。

このクラスは
笑顔で溢れていた。

優太くんを中心にして。


「桃ちゃん、ヨロシクね!」

「桃ちゃん、入学早々大変だったね(笑)」


私にもどんどん声がかけられる。


「うん。こちらこそ、ヨロシクね!」

「どうもありがとう!」


私もどんどん返事をする。

そしていつの間にか、
笑顔の輪の中に入っていた。




あの言葉…


「2番目の友達も、
 3番目の友達も募集中だから、
 ヨロシクね♪」


あれはきっと、
私に気を使ってくれたんだ…。


振り返って
優太くんの席の方を見ると
優太くんも私を見ていたのか
ごく自然に目が合った。


胸がドクンと大きな音を立てて、
思わず逸らしそうになったけれど、
どうしても…


私は優太くんの瞳に向かって
唇だけで「ありがとう」と言う。

できるかぎりの笑顔とともに…。

優太くんはなぜか
びくっと驚いた顔をしたけれど、
それはほんの一瞬で
すぐにとびきりの笑顔と
ウインクを返してくれた。




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出会いは、やわらかく、あたたかく…3

「ふ~ん…。
 それが、神聖なる聖堂に
 手を繋いで入ってきた理由?」

「う、うん。」

「…要するに、
 入学早々ナンパされたってことだ。」

「ち、違うよぉ!
 ただ遅刻しそうになってたから…」

「しそうに…、じゃなくて
 バッチリしてたけどさ、遅刻。
 しかも遅れたうえにド派手な登場で
 あんた今、学校一の有名人だからね。」

「ええええ―――っっ!?」


そう言えば、
すれ違う人たちの視線が痛いかも…。




私の名前は白石桃。

聖マリアンヌ短期大学食物学科1年
…になったばかり。


「よりにもよって、
 あんな女子に人気が出そうな男と…。
 不安だ、すっごく。」


と、隣で唸ってるこのコは
同短期大学看護学科1年の
北川愛未(まなみ)。

愛未は小学生の頃からの大親友で
私のことなら何でもわかってる心強い存在だ。

愛未が心配してるのはきっと、

“私がイジメられないか”

ってことだと思うんだけど、


「大丈夫だよ。
 食物学科に男子はいないだろうから、
 他の学部でしょ、あの人は。」


この聖マリアンヌ短期大学は
食物学科と看護学科からなっていて、
広大な敷地内には
聖マリアンヌ医科大学と
聖マリアンヌ医科大学病院も併設されている。


「男の子だし医学部かも!
 だからもう、会うこともないよ。」

「いや、
 会う会わないが問題なんじゃ無くて…。
 …まぁ、
 会わない方が良いに決まってるけど…。」


愛未はそこまで言って、
黙り込んでしまった。




腰に届く程のストレートの黒髪が
春の風によって優雅になびいている。

眉間に皺を寄せた表情も
エキゾチックでハッキリとした
目鼻立ちのせいか
どこか色っぽい。


ホント、
同じ18歳とは思えないな…。

制服も似合ってるし。


紺色のブレザーに
グレーのプリーツスカート。

カトリック系の学校らしい
清楚なデザインの制服なのに
愛未が着ると
おしゃれな服に見えるから不思議だ。


「愛未…?」

「…」


考え込んだままの親友は
2人が共に歩んできた『歴史』を
遡っているのかも知れない。

それは、

私が泣いて、
愛未が怒る、

そんな歴史…。

同じ学校に入学したけれど、
愛未は3年制の看護学科、
私は2年制の食物学科。

今までの様に
べったりっていう訳にはいかない。

それに看護学科は
かなりタイトなスケジュールだと聞いている。

私を気にかけている時間など
無いだろうし、
作らせてはいけない。

だからこそ、
今日の入学式も
迎えに行くと言う愛未の申し出を断って
ひとり門をくぐったのだ。


…結局、
遅刻しちゃったけど。




「愛未、そろそろ行かなきゃ。」

「ああ、うん。
 もうそんな時間か。」


入学式が終わって、
教室でのオリエンテーションまで20分。

聖堂から出てきたところを
愛未に呼ばれて、
中庭のベンチに座った。


「桃、大丈夫?
 教室の場所、わかる?」

「もぉーーー!
 愛未、心配しすぎ!
 さすがに私も
 学校内で迷ったりしないから!」

「…説得力無いけどね、それ。」

「う…」




「迷ったら人に聞くこと!」


そう念を押して、
愛未は中庭の向こうに消えて行った。

その姿を見送って、
バッグの中から学校案内の冊子を取り出す。

冊子の背表紙が
学校全体の見取り図になっていた。

くるくると回しながら、
向かうべき方向を確かめる。


「え…っと、中庭がココだから、
 食物学科の教室がある棟は…」

「あっちだね♪」

「え!?」


聞き覚えのある弾むような声。

はっ!と顔を上げると
満面の笑顔で
地図が示す方向を指差す…彼がいた。




「中村…さん?」

「そうじゃなくて、優太。
 同じ学年だって言ったでしょ?」

「…優太、さん?」

「優太。」

「優太…くん」

「うーん。ま、いっか。じゃ―――」
 


と、当り前のように手を取った。




で、で、で、でじゃヴ!?


驚く私に、


「オリエンテーションまで
 遅刻しちゃまずいでしょ?」

「!」


のひと言。


それは、
そうなんだけど…。

すごく正論なんだけど…。




中庭を抜け、
彼―優太くん―が指差した方向に走る。

手をしっかりと握られたまま…。




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出会いはやわらかく、あたたかく…2

似てる…?

いや、
気のせい…か。




少女と言っていいぐらいの
小柄な体系に
肩すれすれの
柔らかそうなボブスタイルが
余計に幼さを強調してる。

僕の視線から逃れるように
花びらを見つめる瞳は
丸く愛らしい。

化粧してないのかな?

自然な長さの睫毛や
恥じらいから色付いた頬…

すごく好感が持てる。

今どき珍しいタイプの子だ。

純真無垢って言葉がピッタリな。




ほら。

全然似てないじゃないか。

だって、アイツは…。




って、
いつまで…


「見つめるつもり?」

「え?」

「そんなに見つめたら
 花びらが恥ずかしがっちゃうよw」

「!?」


分かってるんだけどね。

多分そういう理由だけで
掌を凝視してる訳じゃないって。

でも、


「君さ、入学式出ないの?」


そう。

式、始まってるんだよねぇ。




彼女は
急に現実に引き戻されたせいなのか、
ものすごくあたふたしてる。

ま、まんがみたいな動きだな…。

ああ、方向違うから!

聖堂は…




「ほら。そっちじゃないよ。」

「!?」




いや…、
手握っただけでそんなに驚かなくても。

…ホントに
純情なんだな。




「…やっぱり」




あそこに行ってきたから、
感傷的になってるだけだ。

アイツは…、
手を取っただけで、
首まで真っ赤になるような、
そんな…




「あ、あの…―――」




細く震える声…。

声だって、
似ても似つかない…。

手首だって、
簡単に手折れそうな…




「君、名前は?」

「え?」

「なーまーえ。」

「桃…白石桃です。」

「桃ちゃんか。
 スッゴクかわいい名だね。
 僕は中村優太。」

「中村…優太さん?」

「さん付けはいらないよ。
 だって同じ1年だもん。
 ほら、タイの色同じでしょ?」

「あ…。」

「つまり、僕も遅刻組なの。
 だから一緒に行こ?」

「は、はい…。」

「だーめ!ハイじゃなくてウンね!」

「は…う、うん。」

「よし!
 じゃ、行こう、桃ちゃん!」




僕は
彼女の手首を握ったまま走り出した。




入学早々、
怒られちゃうな。

でも、まぁいっか。

このコと2人なら。




まだ、
胸がざわついている。

でも、彼女に触れてると
どこかほっとするような感覚もある。

聖堂に着く頃には
複雑に乱れるこの感情も
落ち着いてくれてるだろうか? 




浮雲亭1 浮雲亭2

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出会いはやわらかく、あたたかく…1

パンフレットで見るより
何倍も凄い…。




その見事な桜並木に圧倒されて、
私は口をぽかんと開けたまま
ただ上を見上げていた。

左右から伸びた枝枝で
空さえも見えない。

見えるのは
桃色の世界…。




今朝、
制服のタイが上手く結べずに
出かけるのが随分遅れてしまった。

おそらく、
入学式が行われる聖堂は
この並木道の先にある。

前にも後ろにも誰もいない。

もうすぐ式が始まる時間なんだから
それって当り前で、
私も急ぐべきなんだけど…
なぜか動けずにいた。




春の風が花びらを揺らし、
私の体に次々と桃色を落とす。

染まっていく身体に
まるで自分も
この風景の一部になったような
そんな錯覚を覚えた。

目を閉じ、
深呼吸をする。

桜の花には
ほとんど香りが無いと
聞いたことがあったけれど、
こうして深く吸い込むと、
かすかな淡い香りがした。

何度目かの深呼吸をしたところでふと、
頬に当たる風が
止んでいる事に気付く。

そっと目を開けると、
舞い落ちていた花びらも
ぴたりと動きを止めていた。

違和感に再び見上げると、
一片の小さな花びらが
ゆっくりゆっくり
落ちてくるのが見えた。


「あ!」


私は条件反射のように手を伸ばし、
両の掌を上に向け、
到着を待つ。

その時…、


「これが欲しいの?」


明るく軽やかな声が聞こえ、
すぐ後ろで体温を感じた。

そして
私の伸ばした手の十数センチ上に、
別の掌が広げられる。


「え!?」


間もなく花びらは
私の背後から手を伸ばす人物の掌に着地した。


「よぉし、ゲットしたよ♪」


嬉しそうな声を上げながら、
目の前に回ってきたその人は、


「はい。どうぞ。」


春の日差しよりも柔らかく、
頬をくすぐる風よりも爽やかに、
ニッコリ笑って手を差し出した。

掌にちょこんと乗せられた花びら。


「不思議な物欲しがるんだね?
なーんか、かわいっっ♪」


そうクスっと笑って、
私の顔を覗き込む。

あまりにも近くて、
茶色の髪が
頬に触れてしまいそう!


「あれ?固まってる?
ビックリさせちゃった?
ごめんね、急に声かけたりして。」


本当に申し訳ないといった声音に
小さく首を横に振る。


「許してくれるの?
じゃあ、これ。」


だらんと降りたままだった私の右手を掴み、
そっと花びらを移した。

その人の掌より
一回りは小さい私の手に
薄桃色の一片が収まる。


「あ、あの、ありがとうございます…。」


ようやく口から出た言葉に、


「どういたしまして!」


と、さらに破顔した。

警戒心が無用なことなんて
誰が見ても分かるような
人懐っこい笑顔。

くしゃくしゃな笑顔で
隠されてはいるけれど、
その容姿はアイドルのように整っている。

きれいな二重に
形の良い眉、
唇なんかサクランボみたい。

ゆるふわのパーマも
とっても似合ってて…。


なんか、この人、
すっごくかわいい…。

男の子なんだけど。 




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